Lyli Herse 1928 - 2018


8度のフレンチ・チャンピオン(ロードレース)に輝き、
1950年代から60年代にかけてまさに“リリーの時代”とも言える、
一時代を築き上げた女性サイクリストであるリリー・エルス。
彼女の訃報が昨日、私たちのもとに届きました。


1958年フレンチ・チャンピオンシップにて
1月6日はリリーの90歳のバースデー。
そのお祝いのためのブログを用意して、
お祝いのメッセージを送ろうと話していた矢先のこと。
2018年1月4日、89歳でした。

昨年の夏に訪ねたときは、とても元気だったのに。
にわかには信じがたいです。


1949年ポリー・デ・シャントルー。ロベール・プレスタとタンデムで記録を樹立
1940年代のコンクール・マシン、
ポリー・デ・シャントルーのヒルクライム・レース。
そしてフレンチ・チャンピオンでの勝利。
彼女の残した数々の栄光の記録は今後も色褪せることはないでしょう。

 
1960年代のルネ・エルス工房とルネ・エルス。デモンタプル自転車のプロトタイプとともに
彼女が駆った自転車はフランスの自転車史を語るうえで欠かすことのできない、
優れたフレームビルダーであった父のルネ・エルスの手によるものでした。

父親の主宰するルネ・エルス工房のショーウインドーには、
いつだって彼女の記録が誇らしげに掲げられていたと言います。


1966年パリ・ブレスト・パリにて。リリー・エルス(左奥)、ルネ・エルス(左手前)。
この年のファーステスト・ライダーとともに
そんなリリーは1967年に選手を引退。
引退後はチーム・ルネ・エルスのサポートや選手育成にも尽力し、
教え子でもあるジュヌビエブ・ガンビヨンを世界チャンピオンに導くなど、
指導者としても活躍しました。

ポリー・デ・シャントルーやパリ・ブレスト・パリで
数々の記録を残したチーム・ルネ・エルス。
チームの傍らにはいつだってルネ・エルス、そして彼女がいました。

チーム・ルネ・エルスのサポートをしていたころ、
ライダーを待つあいだ、刺繍や編み物をしていたというリリー。
彼女の自宅には今もたくさんの刺繍が飾られています。



これまで日本では紹介される機会の少なかった、
フランスのツーリング自転車史の背景に隠された才能溢れる親娘の物語。
そして、フランスの女性サイクリスト史に名を残すレジェンド。

きっと彼女は大勢のサイクリストにとって、
あまりにも眩しく、美しく、強く、近寄りがたい存在だったに違いありません。

だから、初めて会ったとき、
自転車の話だけではなく、刺繍や愛犬の話、庭の花々の話を楽しそうに語ってくれる
リリーのチャーミングな笑顔に驚き、よりいっそう魅了されました。



花が好きだと話したら帰り際に、
庭の花を手早く摘んで、ブーケをプレゼントしてくれたリリー。

ああ、なんて素敵な女性なのだろう。
そんな風に感じたのが昨日のことのようです。

もっとたくさん、お話を伺いたかった。
もっとたくさんの時間を共有したかった。

彼女が着ているお手製のニットは、袖を外してノースリーブとしても楽しめる2Way仕様。
手づくりの才能もあったリリーは、チームメイトのためにセーターを編むことも少なくなかったのだとか
リリーはまさに、憧れの女性。
そんな彼女がもういないということが今はまだ信じられません。

今日はリリーの90歳の誕生日。
この日をともに祝うことができなかったことが悲しい。
けれど、きっとリリーは私たちのなかで生き続けるのだと思います。

友人たちとの会話の中でふと、思い出しました。
1月4日は、彼女が敬愛していた父・ルネ・エルスの誕生日。
もしかしたら、リリーはこの日を選んだのかもしれません。

この事実が彼女の友人たちの心を、ほんの少しだけれど、
和らげてくれたように思います。

彼女に想いを馳せて。

ご冥福をお祈りします。

Merci, Lyli. 
Vous continuez à nous inspirer !
Votre vie du vélo, c'était magnifique !


Thank you.  Lyli. You will always inspire us! 

※すべての写真はBicycle Quarterlyの許諾を得て使用しています。

Link: Visit Lyli Herse 2016  ※2年前にリリーを訪ねたときのブログ

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