Ride to the Tulips


この記事は、Bicycle Quarterly の編集長であるJan Heine氏の公式ブログ、"Off The Beaten Path"に寄稿した記事の日本語版です。



雨の日曜日。シアトル滞在中の私はサイクリングの変わりにファーマーズマーケットに出かけることにしました。結構な雨ですが、傘を差している人はまばら(!)。

と、それはさておき、チューリップの花がたくさん売られています。忙しくしていると、時の流れや季節を感じるのをすっかり忘れてしまいますが、そういえば日本もちょうど、チューリップの季節です。北米でもチューリップは人気があるのでしょうか? 不思議に思ってヤンに訪ねると「このあたりもちょうど、今がチューリップの季節だからね!」とのこと。へぇ。ワシントン州でもチューリップを栽培しているんだ。知らなかったです。

帰宅後、さっそく調べてみました。スカジット・バレー(Skagit Valley)という場所が、このあたりでは有名なチューリップの産地のようです。ヤンによれば、チューリップ畑はメジャーな観光地になっているとのこと。サイクルツーリストは、人の多いところ=観光地を避けて旅をする傾向があるもの(私だけ?)。ご多分に漏れず、ヤンもチューリップの季節にスカジット・バレーに出かけたことはないといいます。

私はツーリスト、しかもシアトル・ビギナーです。思いっきり、観光がしたい。そうとなれば、スカジット・バレーを訪ねない手はありません。


よく晴れた次の日曜日。さっそくスカジット・バレーに出かけることにしました。この日のスタートはマウント・バーノン。シアトルから100kmほど北に位置する小さな町です。以前、この町を訪れたときは気がつきませんでしたが、いたるところにチューリップのマーク。本当に、チューリップの町なんですね。


チューリップ畑を見学する観光客でできた大渋滞に胸が高鳴ります。これは期待がもてそう。交通渋滞も自転車の私たちには関係ありません。ふふ。脇道に逃れて、のんびり走ります。青空が、そよ風がなんと心地よいことでしょう!(と、いっても、まだ肌寒いので私には薄手のダウンが必須です)


途中、打ち捨てられたクルマを発見。と、思ったら、どうやら売り物のよう。こうした風景は日本ではあまり見かけないので、文化の違いを感じます。でも、このクルマを買うのって、ちょっと勇気がいるかも。スペア・エンジン付きらしいですが……。



一面のタンポポ畑。すっかり春ですね。でも、チューリップ畑はどこ? 見渡す限り、それらしき畑はありません。


けれど、道標にはしっかり「TULIP ROUTE(チューリップ・ルート)」って書かれているんですよね。う〜ん。どこにチューリップ畑があるのかしら。……もしかして、期待はずれ? というドキドキを隠しつつ、急ぐ旅路でもないので、ぷらぷらと走ります。まぁ、そのうち見つかるでしょう。


黄色いお花畑に、やっと見つけたーーー! と、思って食い気味で走って……近づくと……あらら。水仙畑です。すごくきれい! でも、今日はチューリップの気分なので、どうにも複雑な気持ちです。

チューリップ畑はどこ?? なかなか見つかりません。そして、走ること数キロ。


ようやくチューリップ畑にたどり着きました! 心が少ししぼみかけたところに、この一面チューリップ畑です。日本の風景に例えたなら、6月の美瑛。富田ファームといったところでしょうか。すごい。きれい! 


春から冬にかけて、シアトルは本当に雨ばかり。晴れていたと思っても、シャワーのような雨がザーッと降らない日はほとんどありません。「冬=冬晴れ!」というイメージをもつ日本人である私にとって、ちょっと、、ちょっと、、なシアトルの冬。ようやく本格的な春の到来を感じさせる鮮やかなチューリップ畑。やっぱり春はこうでなくちゃ!


観光客向けのチューリップ畑が満開だったのに対して、販売用のチューリップ畑はまだつぼみ。瑞々しいですね。満開の華やかな美しさとは異なる、清々しい美しさに心打たれます。きっとこれから市場に届けられ、北米中の家庭に春の彩りを届けてくれることでしょう。春っていいな。


チューリップ・ルートを後にして、昼食はラ・コナー(La Conner)で。かわいらしい漁師町で、ちょっとした観光地にもなっている様子です。風情もなにも考えず、神戸牛バーガー(!)を食べたのは、ここだけのヒミツです。。走った後って、お肉、食べたくなるんです。


スカジット・バレー周辺は、とてもフラット。東京近郊で、これだけ開放感のあるフラットなエリアは思いつきません。まるで北海道の十勝平野みたいです。


陽も陰ってきたので、再びマウント・バーノンを目指します。橋の本数が少ないので、水路と川を越えて町を目指すのに、ちょっと大回りしなくてはいけませんが、初めて訪ねる土地は、目的なく走るだけでも楽しいのが嬉しいですね。


フロントバッグには、小さな売店で購入したローカル・アーティストのポストカード。今も、チューリップ・ルートを走っている気分です。


ふと、雨のファーマーズ・マーケットで購入したチューリップの花束を思い出しました。スカジット・バレーを訪ねるきっかけをくれた花束。今日のサイクリングは、とても充実していました。なかなか見つからなくてドギマギしたけれど、チューリップ畑を見つけたときは、嬉しかったなぁ。

帰宅してから購入したチューリップは、今も私たちのダイニングを彩ってくれています。チューリップの季節は、まだもう少し続きます。日本もちょうど、季節ですよね。どうか、みなさんも、春の恵みを楽しんで!

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