Concours de Machine 2016



昨年、夏に訪ねたフランス。その目的は、フランス南部の街、アンベール(Ambert)で開催されたConcours de Machine(コンクール・マシン※)という、ハンドメイド自転車のイベントへの参加でした。すでに、バイシクル・クオータリーでは記事になっていますが、今年も6月29日〜7月2日に開催されるので裏話をちょこっとお届けします。

コンクール・マシンとは、1934年から1949年にかけて開催された、最良の自転車を探求することを目的とした伝説的なイベントです。ルネ・エルスやアレックス・サンジェといったフレームビルダーが最先端の技術を用いて自転車の可能性を探る自転車を作り、競い合いました。評価基準は、軽量化と耐久性、走行に好ましい性能を備えているかという点。各フレームビルダーは優秀なライダーと協働することで約700kmにも及ぶグラベルロードを走り、その性能を証明しなければなりませんでした。アルミ製クランクやカートリッジ・ベアリング、カンティ・レバー・ブレーキなど、現代にも通ずるさまざまなアイデアが生まれたのもこの時代のことです。

そんなコンクール・マシンも1949年以降は途絶えていましたが、昨年に有志によって復活を遂げ、18のフレームビルダー&工房がエントリーしました。2016年のコンクール・マシンでは、ライトと雑誌を運ぶためのキャリアの装着が必須。軽量化のほか、オリジナルのパーツや機構に加点があります。参加条件は「フレームビルダーであること」。大手ブランドやショップではエントリーできません。あくまでも、フレームビルダーが腕を競う場、というスタンスもユニークですね。



審査員の一人、フランスの自転車ツーリング文化史の研究家レモン・リー(Raymond Henry)にご挨拶。彼は文化的側面を研究するだけでなく、フランス全土をブルベやツーリングで走りつくしているベテラン・サイクリストでもあります。

初対面でちょっと緊張していたのですが、私がバイシクル・クオータリーに書いた北海道ツーリングやカスケード山脈でのサイクリングの記事を「あれって、サイクリングの本質だよね。会えて嬉しいよ!」と、気さくに話しかけてくださって嬉しかった! 使用感たっぷりの私の自転車を見て「うんうん。乗ってるとこうなるよね。僕のもそんな感じ」と笑顔です。



ちょっと脱線しましたが、2016年のコンクール・マシンは、約260km、獲得標高差4000m超えの舗装路メインのコースに加え、約70kmほどのグラベル中心のコースなど、かなりハードなルートを走って自転車のテストが行われます。このコースを完走するだけでも結構ハードだと思うのですが、そこは自転車ツーリングに加え、ブルベやレースも盛んなフランス。各ビルダーの馴染みのライダー達はみな、余裕の表情です。なかには、自ら走るというフレームビルダーも。私も「えっ、明日は走らないの?」と、ちょっと驚かれたぐらいです。



バイシクル・クオータリーの編集長であるヤンは、2016年“走れる” 審査員として参加。写真は夜明け前のスタート地点にて。お隣にいるのは、ヤンのよき友人であり、パリ・ブレスト・パリを50時間切りで走るすごいブルベ・サイクリストでもある、ビクトール。ジルベルソーのチームで走るそう。



私は主催者のサポートカーに同乗させていただき、各チェックポイントを巡ります。みなさん、がんばってくださ〜い! 



最終チェックポイントだったCol des Supeyres(標高1366m)。次々とライダーが駆け抜けていきます。みなさん、ここまででも200km近く走っているはずなのに笑顔です。楽しそう!

ちなみに、コンクール・マシンはスピードだけを競うものでもありません。というのも「速ければいい」というルールを作ってしまうと、強いライダーを連れてきたフレームビルダーが有利になりすぎてしまうから。レースとはまた少し、違うのです。美しいだけではダメ。けれど、速く走れればいいというものでもない、というから面白いです。



そんなわけで、チェックポイントを最初に通過する方から最後に通過する方まで、結構待ち時間がありました。走っているみなさん、すいません。絶景のカフェでランチしちゃいました。ふふ。



翌日のグラベルロードの走行後には、フレームや各パーツに破損や不備がないか入念なチェックがありました。キャリアに破損があったり、リアディレイラーが外れた……なんて自転車も。それほど、ハードなコースだったということですね。

気になる結果は……バイシクル・クオータリーをご覧ください♪ ちなみに、私のお気に入りはコチラのカーボン&ステンレスを使ったCyfac。プロレーサーにも愛好家がいるというCyfacが泥よけキャリア付きのオールロードバイクをデザインすると、こうなるのですね。カーボン製の泥よけもとってもエレガント。ちなみに泥よけはフォークやシートステーと一体になっているので何かあったら修理が大変そうですが、そこはショーモデルということで。仕上げもとても美しかったです。



そして、ユニークな発想でキャリアとフォークを一体化させたコチラのペシュトレゴン。フレームビルダーのマチューは工業デザインが得意というだけあって、ユニークな形状のフレームをカラーリングも含めて、とてもセンスよくまとめられていました。ちなみに、ブランド名のペシュトレゴンは、彼の住む村の近くにある峠の名前なのだとか。峠越えサイクリングが好きな私。かなりグッときました。



そして、見ているだけではつまらない! ということで、コンクール・マシン終了後に私もちょっと走りに行ってきました。街からほんの少し離れただけで、のどかなヨーロッパの田舎町といった風情に出会えるから嬉しいですね。



アンベールにて。ちなみに、道路標識に斜線が引いてあるのは「ここで終わり」の印。余談ですが、フランスは道路標識がとてもしっかりしていて、ツーリストに優しいな、と感じます。ミシュランの地図だけでも、かなり綿密にプランがたてられました。




そんなわけで、ざっくりとご紹介したコンクール・マシン。2017年も出かけてきます。私は昨年同様に取材とサポートですが、今年のヤンは審査員としてではなく参加者として走ります。審査員として参加した昨年とは、また違ったレポートをバイシクル・クオータリーでお届けできると思いますので、お楽しみに!

※フランス語の発音でいくと“コンコル・ド・マシン”が近いのですが、昨年ヤンが寄稿した『スペシャルメイド自転車ランドナーの本』(2016/10月発売・エイ出版社刊)にて、コンクール・マシンと訳されていましたので、統一しました。コンクール・マシンの歴史については、スペシャルメイド自転車ランドナーの本での寄稿記事が詳しいです。

2 comments:

  1. Hello and thank you for your blog. I am Jean de Clermont-Ferrand, I live near Ambert. This year again there will be this fabulous competition of machines, with the presence of the best artisans worldwide. It is a great event for the promotion of cycling, hiking.

    Thank you for sharing your passion through your blog and photos. It's splendid.

    I also have a little blog, called life in 650, about my passion for hikers and bike rides.

    Here, maybe soon, perhaps, at Ambert. Jeans.

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    1. Hazimemashite!(It means "Nice to meet you" in Japanese). Thank you for visiting my blog. I'm looking forward to visiting this year's Concours de Machine!

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