Concours de Machines 2017_Day2

コンクール・マシン2日目はアンベールの周囲をぐるりとまわる総距離230km(グラベルロード約50kmを含む)、獲得標高差3800mというタフなコース。コースは直前までベールに包まれていて、数日前に主宰者から配布されたGPSデータとキューシートをもとに走ります。ライトの性能を試すという意図もあって、スタートは夜明け前の午前4時。果たしてどんなコースなのかと、ライダーの表情には緊張が滲みます。


コンクールの目的はあくまでも自転車の性能を試すこと。レースではないので、速ければいいというわけではありません。一方で、グラベルを歩いたり、必要以上にゆっくり走れば、パフォーマンスの高いバイクなのかを測ることができない。そんな理由で、この日のコースには基準となるスピードが設けられました。基準より速くても加点はありませんが遅ければ減点、ということになります。

さらに、ライダーはチームのサポートなしに走らなければなりません。バイクの重量は携帯工具込みで計量され、工具の貸し借りやビルダーやメカニックによるヘルプはNG。ライダーは、それなりに強く、そしてメカトラに対応できる知識も備えている必要があります。もちろん、メカトラブルはないにこしたことがないのですが、工具を車両重量にカウントするのは興味深いシステムですよね。

そんなわけで私も、ヤンのサポートではなくバイシクル・クオータリー取材のためにオフィシャルフォトグラファーのニコラとともに今日1日ライダーを追いかけます。


夜明け前のアンベールはとても寒く、薄手のダウンジャケットに上下のレインジャケットを着込んでも震えが止まりません(6月、しかも車中なのに!)。今日のルートを確認する手も震えます。ひとまず、スタートから25kmほど離れた集落Le Monestierで待つことにしました。今日のコースは基準時速が22.5km/hに設定されています。予定通りなら、1時間から遅くとも1時間半ほどで最初のライダーが通過するはず。


ところが、待てどくらせど一向にライダーが通過する気配がありません。ようやく最初のライダーが通過したのが、スタートから2時間近く経ってから。コースの序盤にグラベルパートがあったこと、ここまで登り基調のコースであったことから、メカトラブルなどもあったのでしょうか。大幅な遅れをとらない限り大きな減点にはなりませんが、想定よりもかなり遅いペースです。


「Bonjour! Ça va? Bonne chance!(こんにちは! 元気? 健闘を祈る!)」と、片言のフランス語で声をかけつつ、展開を見守ります。みなさん、楽しそうに走っていますね。ほっ。最終ライダーを見送って、ひとまず次の撮影ポイントValcivéresへと移動します。


午前7時半、J.P. Weigleのライダーとして走るヤンとBrevet Cycleの走るフレームビルダー・セバスチャンがValcivéresへやって来ました。それにしてもスタートから約50kmのここまで3時間もかかっていますが、大丈夫かしら? 


話を聞けば、分岐の多い今日のコースはGPSデータがあっても分かりにくく、苦戦しているとのこと。サイクリストでもあるフォトグラファーのニコラいわく「フランスでグラベルロードをコースに盛り込もうとすると、かなり複雑なルート設定になってしまう。グラベルを含むサイクリングイベントではGPSが必須なんだよね。それでも分かりにくい。主催者も大変」とのこと。確かに、フランスはいい雰囲気の小径もしっかり舗装されているイメージ。日本とは違った、フランスならではの悩みどころですね。ValcivéresからCol des Supeyresまでは僅か10kmほど。最終ライダーを待たずに、ひとまず峠へと移動することにしました。


標高1366mのCol des Supeyresは吹きさらしの峠。晴れていれば、青空と牧草地の鮮やかなグリーンが気持ちのいい峠です。が、今日はとにかく寒い。峠に着いたライダーは持てる限りの上着を着込みます。それにしても、寒い。私も何度かクルマに逃げ込みました……。

主催者からは、かなりラフなグラベルも含まれると告知があったものの、提示された基準スピードは時速22.5km/h。何度もすいません。けれど、誰もが「乗れる」グラベルだと想像していたんです。ところが実際には、乗って走れるものの、ガレた場所もある様子で「かなりのラフロード。MTBのためのコースって感じ」「ワイドタイヤじゃないとキツい!」とライダー達は口を揃えます。ここでリタイヤすることを決めたチームもあったほど。


峠に最初のライダーが到着したのは8時20分。1時間待っても、数チームしか通過が確認できていません。基準スピードから大幅な遅れがでている今日のコース。私たちも、いつ、どのタイミングでライダーが通過するのか読むことができません。この先、グラベルが続く区間ですが、各区間は短い。クルマで先回りしようとしても、早い段階で峠を通過していたヤンのベストショットを狙うのは難しい状況です。ニコラとも相談をして、ショートカットして次のチェックポイントまで移動。状況を確認することにしました。


チェックポイントのカフェでコーヒーブレイク。ペシュトレゴンのフレームビルダー・マチューとVICTOIREのライダー・マチューがやってきました。攻めず守りに入りすぎずといったペースで、楽しみながら走っているようす。理想的ですね。と、ここでライダーが落車して骨折したらしいという情報が入ります。救急車で運ばれたというけれど、大丈夫なのか……心配です。とはいえ、最終ライダーまで待っているとトップ走者を見失ってしまいます。ここではあまり待たずに、次のポイントへと移動することにしました。


次のチェックポイントはスタートから110km地点の街・La Chaise-Diewにあるベーカリー。今日のトップを激走しているのはCyfac。ほとんどのライダーがチェックポイントごとに十分単位の休憩をとるなか、Cyfacのライダーだけはタイヤの空気圧を調整してすぐにスタート。プロロードレーサーにもフレームを提供するCyfacだけあって、協働するライダーも強いし、走りに対する姿勢もストイック。フレームビルダー自らが走っている場合はもちろんですが、ライダーの走りにも個性があり、それが本当にバラエティ豊かで興味深いです。


15分ほどして、ヤンもチェックポイントのベーカリーに到着しました。補給中の表情はかなり険しく「かなりタフなコース。走れないとか、そういうわけではないけれど、とにかく大変。もっと太いタイヤが欲しくなる(※38mmタイヤを使用)」と、言葉少なに話します。時刻はすでに11時半。スタートからおよそ7時間が経過しています。すでに、最終ライダーはどれだけ遅れが出るか予想もできない。そんな状況になりつつありました。この頃、主催者も大幅な時間の遅れと大きく開いたトップ通過のライダーと後続のタイムに、コースのショートカットを検討し始めます。


最後の撮影ポイントとして選んだPissis。スタートから150kmの地点です。最初に駆けていったのはやはりCyfacのライダーでした。13時8分。トップスピードを誇る彼でも平均時速はおよそ17km/h。基準速度22.5km/hは、最早基準ではなくなっています。30分ほどしてヤンもやってきました。「がんばってー!」と声をかけると「アリガトー!」と元気よく返事が返ってきました。メカトラブルもなく、調子もよさそう。よかった〜。

Cyfacのライダーが通過してから2時間ほど待って、数組が通過。主催者からは、後続のライダーがチェックポイントにたどり着いていない。おそらくショートカットコースに変更する、と、連絡が入りました。ショートカットした場合、この先の区間にグラベルロードはありません。もう、この先でラフグラベルに足を取られることも、メカトラブルが発生することもないでしょう。急がなくては。というわけで、後ろ髪惹かれつつフィニッシュ地点へ向かいます。


16時15分、Cyfacがフィニッシュ。間に合った! 実にスタートから12時間越えのロングライドです。仮に230kmがほぼフラットな舗装路だった場合、ヤンの普段のスピードで8時間程度。12時間越えというのが、いかにタフなコースだったかを物語っているように思います。途中、落車の情報があったライダーについても、骨折ではなく脱臼だったということが判明し、ほっと一息。


フィニッシュ後、パーツの破損や不備などがないか入念な車両チェックが入ります。Cyfacの車両は、フロントラックのボルトに緩みがあったようですが、そのほかは大きな減点になるような箇所もなく車両チェックをクリア。そうそう、42mm幅のワイドタイヤを履いていたんですよね。泥よけ&キャリア付きのカーボンオールロードバイクって、実は初めて見たかも。


ヤンも十数分後にフィニッシュ。コチラもメカトラブルなどはなく、車両チェックも無事に終了。自信をもって乗れるバイクだから! と、パンク修理キットしか持たずに出かけましたが……正直、ほっとしました。大丈夫とわかっていても、待っているほうは心配ですよね。ちなみに、フィニッシュ後「ほとんど乗って走れるいい道ではあったんだけど、22.5km/hはちょっと無理だった。200mぐらい押したかな。本当、太いタイヤが必要だと実感するコースだったよ」と、ヤンが見せてくれた写真がコチラ。


う〜ん。確かに。ちなみに、フランスで未舗装の道というと、大抵はトラクター用の作業道なのだそう。グラベルと一口にいっても、国によって雰囲気が変わるのだなぁと実感しました。何はともあれ、ケガもなく無事に戻ってきてくれてよかった! 詳しいレポートは次号のバイシクル・クオータリーに掲載予定ですので、どうぞお楽しみに♪

※コンクール・マシン関係の本Blogはコチラにリンクを貼ってあります。
コンクール・マシン:初日・プレゼンテーション(Concours de Machines Day1)
コンクール・マシン:2日目・テストライド(Concours de Machines Day2)
コンクール・マシン:3日目・テストライド(Concours de Machines Day3)
コンクール・マシン:リゾルト(Concours de Machines Result)
コンクール・マシン:リゾルト/ピーター・ワイグル(How to make a superlight bike for the "Concours de Machines 2017")






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